0×1は0で、1×0も0。そして0÷1も0だ。だから1÷0も0になりそうだが、0で割る計算はできない、とされる。この理由は、割り算が「数のグループが何個あるかを探すための計算」だからである。
よくある説明
ある数を別の数で割るとき、割った数と答えを掛け合わせると、割られた数になる。例えば6÷3は2だ。だから3×2をすると6になる。もし0で割る計算を「あり」にすると、1÷0が0のとき、0×0は1にならなければならない。それが割り算のルールだからだ。このルールを破ると割り算が壊れる。
でも、0×0が1、というのを許すと、今度は算数ぜんぶが壊れてしまう。0は、いくつあっても0でなければならない。
だから、ある数を0で割る計算は「なし」にしよう。そうすれば丸く収まる(0だけに)。
これは、0で割る計算がなぜできないかを説明する際によく用いられる理屈である。わかりやすい。これで十分だ。
しかし今回は別のアプローチで、なるべく単純な例で掘り下げてみたい。
そもそも割り算とは
割り算とは、Aという数からBという数のグループをいくつ作れるか、という計算である。数字を使うと混乱しやすいので、記号を使って考えてみる。
(🐳🐳)÷(🐳🐳)
これは「(🐳🐳)」から「(🐳🐳)」のグループをいくつ作れるか、という問題だ。答えは「1つ」である。
また、
(🐳🐳🐳)÷(🐳🐳)
は「(🐳🐳🐳)」から「(🐳🐳)」のグループをいくつ作れるか、という問題だ。「(🐳🐳)」は1つ、そして「🐳」が余る。答えは「1つと半分(1/2)」である。
0を割る計算
では、Aが0のときはどうなるだろうか。「(🐳)」が1つもない状態を「__」として表現してみる。
__÷(🐳)
「__」からは、「(🐳)」のグループを1つも作れない。したがって答えは「0」である。
0で割る計算
A÷Bは、Aという数からBという数のグループをいくつ作れるか、という計算である。この計算には、Bが欠かせない。
「__÷(🐳)」という計算はできても、「(🐳)÷__」という計算はできない。なぜなら作るべき数のグループがわからない、というか存在しないからだ。
これが、0で割る計算はできない、とされる理由である。
答えが出せないのではなく、0で割る計算自体が、割り算のルールから外れた式と言える。
よくある誤解:無限大
0で割る計算のよくある誤解に、答えが無限大になる、というものがある。
例えば10を2で割ると、その答えは5だ。1で割ると10で、0.5で割ると20になり、0.25で割ると40になる。割る数をどんどん小さくしていくと、答えはどんどん大きくなる。この例で言えば、割る数が0に近づくほど、割られる10は粉々になっていく。それは宇宙を埋めつくほどの砂になるかもしれない。なので、ある数を0で割った答えは無限大と解釈できる。そういう理屈である。
しかし、数が「ある」のと「ない」のでは前提が違う。「0に近い数字で割ると、その答えはめっちゃ大きな数字になる。だから0で割る計算の答えは無限大になる」という理屈は成立しない。
0は、他の数字のように連続していない。0は数字だが、数であって数でない。数は数でも、数がないことを表す特殊な数なのである。